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「青色光防犯効果なし」と結論

 

 

消えゆく青色防犯灯

 

先日、ニュース番組で「青色防犯灯」が徐々に白色LED灯に置き換わっているという内容を耳にしました。

「青色防犯灯」が全国の自治体で広まったのが2000年代でした。この取り組みは、心理サポートに色光を扱うものにとっては、色彩色光の可能性を感じる、とても喜ばしいニュースでした。

 

警察庁によると、青色防犯灯は2007年3月末時点で、37都府県に1万492基あったとのことでした。

しかし、その防犯抑止効果について疑問視する声が多数上がり、最近では姿を消しつつあります。実際、青色の街灯のみが犯罪抑止効果を持つかどうかについて、10年にわたる研究結果から「街灯を青色にするだけでは、犯罪抑止効果はない」と結論しています。

そこで、今回は青色防犯灯が広まった経緯を追い、減少に至った要因についてまとめていきます。

 

青色防犯灯の導入経緯

青色は一般的に鎮静作用があると言われいます。

英国・スコットランドのグラスゴー市のブキャナン通りでは、景観美化の一環として、オレンジ色の街灯を青色に置き換える試みが行われました。その結果、麻薬常習者が青い光によって腕の静脈が見えにくくなり、注射が難しくなったため、麻薬関連犯罪が約40%減少したとされています。

 

この事実が2005年5月に日本のメディアで取り上げられ、「犯罪が減少した」と拡大解釈して報道されたことが発端でした。ちょうどその年、警察庁に「犯罪抑止対策室」が設けられことから、グラスゴーモデルとして、奈良市秋篠台で試験的に導入されました。その後、日本全国で同様の防犯灯が住宅地、駐輪場、駅前などに設置されることになりました。

 

出典:2012年証明学会報告書
@ブキャナン通りの青色街灯 出典:「青色照明光の心理的・生理的効果に関する研究調査委員会報告書」

 

 

青色防犯灯が減少に至った研究結果

都市防災研究所の客員研究員である須谷修治氏は、2008年に照明に関する研究を行い、一般社団法人「照明学会」の学会誌に青色防犯灯の効果について言及しました。須谷氏によると、グラスゴー市の現地当局からの情報によれば、麻薬関連犯罪は約40%減少したものの、「全般的な犯罪が減少したわけではない」と報告されていました。

 

さらに、2012年に同学会の「青色照明光の心理的・生理的効果に関する研究調査委員会報告書」の井上容子教授(現在放送大学、 奈良学習センター特任教授)によれば、「青色防犯灯の設置が”直接的に”犯罪防止に効果をもたらすとは考えにくい」という結論が示されていました。

以下にその研究結果を簡潔にまとめます。

 

設置地区での犯罪発生件数は実際に減少

青色防犯灯のような色味のはっきりとした有彩色光による照明は、文字情報や音情報に依存せず、特定の領域を際立たせることができます。

これは、その領域が防犯に積極的に取り組んでいることを視覚的に伝え、「ここは防犯対策に力を入れているエリアですよ」というメッセージを発信するのに役立ちます。

青色防犯灯の設置により、犯罪発生件数が設置地域で減少するケースが多く見受けられました。さらに、その減少率は、その地域が所属する市や県の平均減少率をしばしば上回っていることが判明しました。

 

複合的な防犯施策の結果

研究結果からは、青色の光が人の気持ちを落ち着かせるといった印象が、犯罪抑止に直接的に結びつくとは考えにくいことが示されました。

青色防犯灯の導入によって地域の安全性が向上した背後には、むしろ防犯活動の充実生活基盤の整備が大きな要因であると考えられます。要するに、犯罪減少は複数の防犯策が組み合わさった成果であり、青色防犯灯はその中で”間接的な影響”を持つ一要素に過ぎません。

 

白色の光への変遷

防犯灯が青色から白色に変わることで、視覚的な印象や色の見え方も変わります。これには防犯カメラの普及が大きな影響を与えており、白色の光が映りやすいことが理由の一つです。

 

さらに、使用する光源(電灯)と防犯カメラの感度特性との関係も重要です。この関係の調和を取ることで、効果的な照明と映像のキャッチが可能となります。

また、経済的な観点から見ると、エネルギー効率にも注意を払う必要があります。つまり、少ない出力で広い範囲を明るく照らすことが防犯において重要ということから、商店街などでは、白色LED照明への急速な移行が進んでいます。

 

 

まとめ

犯罪抑止のために広まった青色光に関する研究や報告を振り返りました。

青色防犯灯は一時期注目を浴びましたが、最新の研究によれば、その直接的な効果には疑念が投げかけられています。

 

色光を使用することで意識が高まるなど、色の光には確かな利点があります。しかし、安全な社会を構築するためには、色の光だけではなく、総合的な防犯施策と地域の協力が欠かせないことが明らかです。色光の役割はあくまで一部であり、他の要素と組み合わせて総合的な安全対策を進めていくべきと言えるでしょう。

 

 

参考記事および資料

「防犯に効果」実は明確な根拠なかった、青い街灯が風前の灯に…白色に回帰が進む 読売新聞オンライン 2023/8/10

照明学会発刊 有彩色光照明ガイド-防犯照明ガイド- p.12「青色街灯の事例

照明学会 「青色照明光の心理的・生理的効果に関する研究調査委員会報告書」2012/9/19

 

 

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